
「風のつぶやき」は、河原成美がお届けするコラムです。

こんにちは、河原です。10月16日、おかげさまで『博多 一風堂』は創業20周年を迎えました。応援してくださっている皆さまに謹んで御礼申し上げます。ありがとうございます。
あれは1985年のことじゃった。まだ『西通り』の呼び名もなく、人通りは今ほどにぎやかではなかったのぅ。季節はちょうど秋の今頃のことじゃ、鴻池(こうのいけ)ビルの横を入る細い路地裏に一軒のラーメン屋がオープンしたんじゃ。ワシはまだ32歳じゃった。店を『一風堂』と名付け、大きな夢とグツグツ沸き立つ希望に眼を輝かせ、九州の紳士・淑女に食べてもらえるラーメン屋になると意気込んでおった。特に女性を意識しとったのぅ。たくさんの人に自分のラーメンを食べてもらいたかったんじゃ。よぉ働いたのぅ‥‥いつしか20年がたっておった。
河原成美、気が付いたら52歳になっていました。年をかさねた分だけ、たくさんのことがわかるようになってきました。
20年という歳月は、一風堂にとって記念すべき節目の一つ。人に例えるなら20歳は成人する歳ですから。だけど、今の僕にとっては別の意味がある。いいことも大変な場面も経験してきたけれど、20年は過去を懐かしくふり返るための20年ではありません。なぜなら、本当に目指すところはもっと先にあるから。僕の好きな「千日の行をもって鍛となし、万日の行をもって練となす」という言葉が示すように万日、すなわち30年やってみないとわからない世界を知りたい。「一つのことをやり続けても、どうにかモノになるまで30年かかる」と言われる30年を経た時、一風堂がどんなラーメン屋になっているのかを見てみたいんです。もちろん自分も店に入る日があり、スタッフの人たちとまみれながら、お客さまに喜んでいただいたりお叱りを受けたりしながら、一日一日を30年分経験した店がどんな店になっているのか、僕の興味は10年先の一風堂にあるんです。
僕は、誰の中にも「二人の自分」が存在すると思っています。がんばり屋となまけ者、くじけそうになる自分と励ます自分、人に親切な自分と不親切な自分という具合にね。何かをやり遂げようと志した時、大事なのは自分の中の自分と信頼関係を築くこと。そのためには、自分との決めごとを守ること。小さな決めごとでも一つずつ目標を果たしていく自分を、もう一人の自分はちゃんと見ているからね。
約束を果たす自分は、もう一人の自分にとっては信頼に値する存在。その積み重ねなんですよ。自分との約束を守っていれば多少の困難に遭遇しても、もう一人の自分が応援し、手伝ってくれます。すると、身体は一つでも二人分の力が出せるんです。「がんばれ、俺」「負けるな、俺」「くじけるなよ、俺」ってね。そう考えると、自分との約束は守ったほうがいいんです。これは僕自身に言えることだけどね。
何も考えないで過ごす10年と、ゆっくり自分の中の自分と対話しながら目標に向かって進んでいく10年とは、数段の開きが出るはず。どうせだったら僕は思慮深く、迅速に行動に移す充実した10年を過ごしたい。一所懸命やっていけば、物事はきっと形になる。20周年にあたり、そんなことを考える河原です。
30年たった時、「これが新たな出発点だ」と言える何かをつくっていたい。だから、今を「通過点」に留めておきたいんです。
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