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風のつぶやき

「風のつぶやき」は、河原成美がお届けするコラムです。

「ありがとう」は真剣勝負vol.46

 こんにちは。お元気ですか? 春は出会いと別れ、そして旅立ちのシーズン。あなたの周りはいかがですか?
「ありがとうは真剣勝負」また仰々しいタイトル付けやがって、と思った方はごめんなさい。僕はずっと以前から「ありがとう」について考えていて、「ありがとうの実感」「感謝の始まりはお母さん」「人生はありがとうに生まれ、ありがとうに還る旅」「生きていくことは、ありがとうさがし」「ありがとうございます。いらっしゃいませ」など、何度か「ありがとう」について述べてきました。脳の隅っこや心の根底にずっ〜と一つのことを思っていると、ふと気付くことってありますよね。「ありがとうシリーズ第六弾」と思って読んでください。

 私事になりますが、実は僕の親父は昨年秋から入院していまして、年明けに手術をしました。お袋と兄貴と僕が見送る中、手術室に運ばれて行く親父の姿、そして待つ時間。しばらくたって手術室からストレッチャーに乗せられ出てきた親父は、まだ麻酔が効いて眠っていました。意識のない親父の姿が見えた瞬間、自分の体内に「ありがとうございます」の感情が、全身の血液を総じた中から沸き起こってくるようでした。このように深く凝縮された「ありがとう」は初めての体験でした。

 「ありがたい」という言葉の語源は、仏教用語の「有難い」にあり、すなわち「有ることが難しい」という意味だそうです。僕らは一日に何度も「ありがとう」と何気なく発していますが、ありがとうには深い意味と、万物を活性させるエネルギーがあるといいます。「ありがとう」と声をかけた水が、美しい結晶を形づくることを実証した写真を、江本勝氏の本でご覧になった方も多いでしょう。
「ありがとう」は確かにコミュニケーションを円滑にする言葉ではあるけれど、ただ単に事あるごとに使えばいいというのではなく、特定の「その人」「その事」に対し、意識して発するべきではないかと思うのです。「ありがとうは真剣勝負」、それくらい強い意志を持って口にする「ありがとう」。ありがとうのベクトルは大きいほうがいい。僕はそう思います。

 ドイツには「人は皆、自分の靴のサイズで物事を計る」という諺があると、アインシュタイン博士の語録に記されていました。靴のサイズが意味するのは、22.5cmや26cmなどの長さの実寸ではなく、人間の器に匹敵する奥行きや幅を指しての諺でしょう。人間として薄っぺらな人の「ありがとう」と、たくさんの物事を経験した人の「ありがとう」は、純度やポテンシャルが違うと感じるのは、僕の偏見でしょうか?
一期一会の出会い、挨拶をきちんとすること、掃除の習慣をつけること、履物をそろえることなど、当たり前のような昔の人の教えに、意味ある大切なことがたくさん含まれていますよね。純度の高い「ありがとう」も、それらと等価値を持つ大切なことだと思うのです。

 平澤興氏は生前「本物になることはむつかしい」と述べておられたそうですが、「人間として本物になること」の要素に、感謝の意味を知り純度の高い「ありがとう」を言えることも含まれるはずです。ビールをおいしく提供できる人を「ドラフトマスター」というように、「ありがとうマスター制度」があれば、僕はいちばんにその資格を取得したいし、今年、創立20周年を迎える僕らの会社の人たちにも、一人残らず「ありがとうマスター」になって欲しい。気を込めた輝くばかりの「ありがとう」を、相手に仰々しさを感じさせないくらいさりげなく、温かさが伝わるように言えたらいいな。
「風のつぶやき」をいつも読んでくださっているあなたに、僕から「ありがとうございます」。


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