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風のつぶやき

「風のつぶやき」は、河原成美がお届けするコラムです。

念じなければ 花はひらかず vol.40

 こんにちは、河原です。僕はいま上海に来ています。上海の会社との合弁で出店する『78(チーパー)一番ラーメン』のオープンを目前に、最終仕上げの段階に入ったところです。

 「上海にラーメン店を出店します」と言ったら「凄いですね」「頑張ってください」と、たくさんの方が声援をくださいました。「よし、きっと成功させるぞ」と志高らかに日本を旅立ったものの、大変なんですよ。いざ目の前にオープンというゴールテープが見えていて、ラストスパートの力を出し切るのって。

 現実問題として「食材が揃わない」「スタッフの最後のまとまりが整わない」「内装や備品などが思った通りにいってない」…、そんなことでの苛立ちを隠せない自分が、自分でわかるんです。そうして「まだまだやなぁ、河原」と思うんです。

 こんな時、頭をよぎるのは愛読誌『致知』(致知出版社発行/人間学を学ぶ雑誌)で読んだ言葉です。3月号の特集「壁を越える」で紹介されていたプロスキーヤーの三浦敬三氏(満100歳)と息子の雄一郎氏(71歳)の対談記事に「人類には『限界突破の法則』というものがありますから、誰か一人が百メートルを十秒切って走れたら、あっという間に他にも九秒台で走れる人間が出てくる。誰かが限界を越えていけば、俺だってできるはずだということに気づくわけです。
その壁に誰かがまずトライし、チャレンジして、それを越えていくことによって、人間の新しい可能性というものが開けていくわけです」と書かれていました。

 この三浦敬三さんと雄一郎さん、孫の雄大(ゆうた)さんは昨年二月、三世代でモンブラン大氷河を滑走(3,842メートルの山頂付近から標高差1,900メートルの距離約20キロメートルを滑り降りた)に成功されました。時に敬三さん99歳、雄一郎さん70歳での偉業です。また、その3ヶ月後に雄一郎さんは、世界最高齢でエベレスト、8,848メートルの登頂に成功されています。雄一郎さんは「頂上に行く前に夢を捨てないことと、最後は笑って死ねばいいという覚悟があったから、できたことだ」と述べられているし、父・敬三さんは「足を動かしていさえすれば、いつか目的地に着くんだということしか考えない」とおっしゃっています。71歳と100歳の「事を成し遂げた人」の言葉は、ずっしりと深く僕の胸に刻まれました。息子・雄一郎さんは「こういう父親を持っていますと、僕ももう七十歳ですが、年を取ったなどと言えません」と笑って話されていました。

 また『致知』の2月号には詩人・坂村眞民(しんみん)さん(満95歳)のことが紹介されていました。「二度とない人生だから」などの有名な詩があります。真言ともいえる「念ずれば花ひらく」をご存知の方も多いことでしょう。眞民氏の人生は、正に「念」に生きる人生。念というのは「念仏」の念ではなく「思念」の念、それ即ち「思う」より強く「念おもう」ことだ、とありました。「一心に生きる、一念に生きる」「念は一念の念、念願の念です」と。

 三浦敬三さん、坂村眞民さん、松原泰道さん(『南無の会』会長・96歳)、そして僕の敬愛する日清食品の安藤百福会長(3月5日で満94歳になられます)、そういう方々の言葉は重さが違う。ほぼ一世紀を生きて尚、現役で自分の道を貫かれる人生の先輩方の生き方や言葉に、教えられることばかりです。たかだか51歳の自分は、ようやく「道半分」に届いたところ。「これからが頑張りどきやな」と思うわけです。

 人それぞれ、己の身の丈に合った夢や目標でいいと思うんです。何かを心に秘め、志を持って生きていく人の強くたくましい姿は、周りの人にも勇気を与える。憧れる人や目標とする人がいて、その人を超えようと後に続く人がいる。

 やっと上海に出てきたばかりの自分です。すんなり行かないことも多いけど、心に描くのは、ラーメンを通して3年後、5年後、10年後の中国に、どれだけ影響を与えることができているか、ということ。還暦を迎え、古稀を過ぎ、白寿を越えた僕は、どんな顔をして生きているのだろう?そう考えると今日(こんにち)の困難も、ちっぽけなことに過ぎない。「念ずれば花ひらく」、もっとわかり易く言い替えるなら「念じなければ花はひらかない」。未熟者の河原ですが、諸先輩方のように自分も後輩の目標にされるような、憬れを持ってもらえるような人になりたいと思います。

 最後に「リーダーは、いつでもどんなに落ち込んでいようが何しようが、上機嫌で希望の旗印を掲げていなければいけない。これを降ろしてしまったら、誰もついてこなくなる」と、三浦雄一郎さんの言葉にありました。


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